愛そのものが見捨てられないところに
わたしの魂よ、むなしいものとなるな。あなたのむなしい騒ぎで心の耳をふさぐな。おまえもきけ、みことばそのものがおまえに立ち帰れと叫んでおられる。愛そのものが見捨てられないところに、そこに乱されない休息の場所がある。
『告白 上 (岩波文庫 青 805-1)』p.110
最愛の友人を亡くしたことに触れた第四巻の後半では、この世にあるものの儚さに思いを馳せ、それと同時に決して変わることも失われることもない神の偉大さについて語っている。アウグスティヌスの思想についてはまだあまり把握していないけれども、このあたりで語られる「時間とともに変わりゆく世界」と「時間の外にいる神」の関係性はアウグスティヌスの思想を予告しているように思える。
冒頭に引用した第四巻 第十一章の言葉には胸を突かれた。だれでも別れや裏切りやすれ違いで他人への愛をなくしてしまうことがある。どうしてもその人が愛せなくなってしまうときがあるかと思う。そういうときには、愛情に満たされることが必要なのだと思う。普通の人間であれば、そうした愛情が人間関係の中に探し求めてしまい、ますますさまようはめになる。けれどもアウグスティヌスは、無常の現世に求めることを否定して、不変の世界を心のうちに見出して、そのなかで愛情に満たされたのだ。
私もいま、人を愛することがなかなかできないでいる。何の苦労もせず、人を信頼して共に楽しんでいることを疑わない状況に身を置きたいと思っている。その状態を作り出すために、私もまた休息の場所を見出す必要があるのだと思う。それがキリスト教的な神の前にいることかどうかは分からないけれど。
- 作者: アウグスティヌス,服部英次郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1976/06/16
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